日記

大きいメンクリに転院した。偉そうな態度の医者が薬をくれた。

治療することを決意

年が明けて、変わることを決意した僕は、しばらく足が遠のいていた精神科に再び行くことにした。

メンクリの先生に以前から勧められていた、今通っているところよりも大きいのところに行く。

そこでは話を聞くだけでなく、認知行動療法という治療法がとられるらしい。

グループワークなどをするみたいだ。

人前で自己紹介すらもできなくなってしまった僕にとっては、かなり敷居が高く尻込みしていた。

メンクリに行くたびにそこに行った方がいいと言われていたが、毎回忘れたふりをした。

でも、今はそんな悠長なことを言ってられる場合ではないと思い、電話をかけた。

別のメンクリに通っているなら紹介状が必要だと言われたため、それをもらってからまた予約し直すことになった。

今まで言っていなかったことを伝えた

紹介状をもらうため、4か月ぶりに足を運んだ。

全く進歩がないことに呆れられるのが怖くて、しばらく行っていなかった。

久しぶりに見る顔に懐かしさを覚えつつ、前に勧められたメンクリに行くことを決め、そのために紹介状が必要だからもらいに来たと伝えた。

今の状況を聞かれ、あまり進展はないと言った。

バイトに応募はするんだけれども、面接をバックレてしまう。

赤面してしまったり、うまく喋れなかったらどうしようとか色々考えてしまい、結局来た道を引き返す。

その繰り返しで気づけば年が明けていた。

また、今まで赤面の症状しか言ってなかったが、顔を突き合わせると表情が引きつって笑えないことを開示した。

愛想笑いができるようになりたい。

そんな気持ちを打ち明けた。

隠したってしょうがないから、洗いざらい全部話そうと思った。

今までで一番すらすら喋れたと思う。

新しいメンクリはカフェみたいで、金髪ギャルがいた

 実はここに一度だけ訪れたことがある。

 1年前の冬頃、精神科に行こうと思い、いろんなところに予約しては、建物の前に来て怖くて入れなくてそのまま泣きながら家に帰るっていうのを繰り返していた。

そして行くことを諦めた。

半年後、このブログを始めて、複数の方に精神科で見てもらうべきだと勧めれられ、行く決心ができた。

mukiryoku7.hatenablog.com

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そのとき何個も予約してはバックレたうちの一つがこのメンクリだ。

建物に入り、メンクリがある階に着くと、、何やらカフェのような空間が目についた。

「あれ、おかしいな。この階で合ってるはずなんだが。」

そう思い周りを見渡すも、他にそれらしきエリアはない。

ふと先ほどの方角を向くと、メンタルクリニックの看板があった。

そう、こここそが目的地である。

予想していたのとは全然違って、壁が木目調の色合いで温かみを感じ、明るくて開放的な場所だった。

入り口付近にカウンターがあって、その奥にお茶を汲む台があり、一目でここがメンクリだと気づかなかった。

中に入ると、受付に金髪のギャルが待ち受けていた。

異空間に迷い込んだ僕は、マスク越しにも伝わるような顔の赤面を感じながら、たどたどしい受け答えをした。

金髪ギャルは、社会人らしいしっかりした態度で説明してくれた。

小柄ながら、内側では決して折れることのない強い芯のようなものを持っていた。

多分僕は彼女よりも年上だが、全くと言っていいほどまともな態度を取れなくて、己の未熟さを思い知らされた。

体は成長しても心はまるでしていなくて、今まで一体何をしてきたんだろうと恥じた。

診察が始まる

問診票を書いて、しばらくして呼ばれた。

換気のためか、半開きになった扉を開けると、透明の板越しに冴えないおじさんが視界に入り込んだ。

互いに挨拶を済ませ、さっそく診察が始まった。

まずは、僕の悩んでいること、今の状況、過去のこと、家庭環境、生まれた場所など、根掘り葉掘り聞かれた。

プライバシーなどと言ってる場合ではないが、少しむずがゆかった。

 

 ・幼少期、友達と砂場や遊具などで遊んでいたか?→はい。

・小中時代の成績を上中下で答えて→小学校は下、中学校は上

・大学に行けない理由は?→教室に入れなかった。赤面したり表情が引きつったり、うまく喋れなくて恥をかくのが怖いからだと思う。

 

両親は好きか嫌いかで答えろと言われ、一瞬詰まった。

素直に好きというのは恥ずかしいのもあるし、そもそも好きってなんだ。

哲学的な問いではないだろう。

「母親は嫌いというか苦手です。相性が悪いと思います。父親はまあまあ好きですね。」

と答えた。

母親はマッチョイズム思考で、昔から僕に“普通”であることを強要してきた。

精神的な弱さは甘えでしかないと思っている。

大学不登校がバレたとき、驚きと父親の話術によって流されたため怒ってこなかったが、やはり根本的な考え方は変わっていない。

人間の根っこはそんな簡単には変わらない。

父親は世間から見ても優しいと思うし、僕も好意的な感情を抱いている。

時々ほっといてくれよって思うこともあるが、どんな言動も心配から由来していることは理解している。

親の年齢を聞かれたとき、正確に答えられない自分に驚いた。

そういえばまともに誕生日を祝った記憶がない。

ああ、ほんとに僕は親不孝者だったんだなぁ。

これからは誕生日も、父の日母の日も、照れ隠しなしでちゃんと贈り物をして祝おう。

そして日頃の感謝を伝えようと誓った。  

 

一通り質問が終わり、社交性不安障害または社会恐怖症と診断された。

僕は認知が歪んでいるのだそうだ。

自分の考え方の癖を理解したら自然に治るものらしい。

医者が偉そうでムカついた

僕が何度か質問を聞き取れなくて聞き返したことがあった。

すると医者はそのたびに、ため息をつくように深く息を吸い込んで、露骨に苛立ちながら質問を繰り返した。

この高圧的な態度に、不信感を抱かずにはいられなかった。

また、僕が質問に答えても相槌一つ打たず、黙り込んでメモしていた。

対人コミュニケーションの基本すらできていないやつが僕に何を教えられるのだろうか。

医者という職業のおかげで、周りが持ち上げてくれたからここまで生きてこれただけで、彼が普通のサラリーマンだったら間違いなく淘汰されている。

所詮肩書だけで生きてきた人間だ。 

 

年度の計算を暗算して話していたら疑ってかかってきた。

「いや違うでしょ。今は令和3年だから…。あ、あってるか。」

と、半笑いしながら指摘してきた。

僕は間違っていなかったが、彼からの謝罪はなく、流されてしまった。

彼は精神疾患持ちの人間なら間違えているに違いないと決めつけて、馬鹿にしていたのだ。

僕を見下していたのだろう。

自分の間違いを認められない、謝れない傲慢な人間だと言える。

僕自身も不愛想で可愛げのない人間だから人のことを言えたもんじゃないけれど、患者を不快にさせるような態度を取るのはまずいと思う。

もしかしたら僕が精神科医に求めすぎているということも考えられる。

精神科医はこうあれ、と人に理想を押し付けているのかもしれない。

接客業じゃないのだから過剰に求めてはいけない。

1日に何人もの精神異常者を相手にしていて疲弊しているだろうし、めんどくさいと思う気持ちもわからなくはない。

僕は他人に不必要な期待しているのだろう。

でも、こっちは命がけで来てるんだよ。

良い人生にするために、僕は変わっていかなくちゃいけない。

だから今まで逃げてきたことに挑戦しているの。

それに水を差すような行為をするのはやめていただきたい。

この人に比べると、前のメンクリの先生はほんとにいい人だったんだなと思った。

ひ弱で元気のない人だったが、礼儀正しいし優しく話を聞いてくれた。

曜日によって担当医が違うため、次回からは違う人に変えるつもりだ。

あなたは自分を世界の中心だと思い込んでいる

「じーっと君のことを観察してる人はいない。

以前君が赤面してるのを茶化してきた人がいるようだけど、その人はたまたま君のことを注意深く観察して心の機微を感じ取っていたのだろう。そんな人ごくごく一部だ。99%の人はそうじゃない。

あなたが赤面しようが、表情が引きつろうが、誰も気にしない。

自分がそんなに注目されていると思っているのなら大間違い。思い込みだよ。

例えば飲食店の人があなたの顔が赤くなっていたとして、気にすると思う?否、彼らはどう金を巻き上げようかと考えている。金がもらえればそれでよく、あなたの顔色なんて端から興味ない。

営業の人が、もしあなたの表情が引きつっていたとしても、どうやって商品を買ってもらえるかしか頭にないから気にも留めないでしょう。

蟹の味噌を食べるとき、この蟹いい顔してんな~って選ぶ人いないでしょ。持って重さを量って選ぶんだよ。それと同じ。誰も気にしちゃいない。

私も以前、自分が喋っているところを動画で撮って見てみたら、こんな喋り方しているのかと思った。あなたも一回自分を客観的に見てみるといい。あなたが思っている以上に大したことないから。」

医者は僕にひたすら語り掛けた。

まるで考え方を刷り込むように。

これが精神療法なのだろう。

話は恋愛論にまで発展した。

「女性が見た目で判断すると思っている男は多いが、実はそうじゃない。

見た目は様々な要素の一部に過ぎない。

なのに鏡を見て髪型をチェックしたりすることに夢中の男ばかりだ。

女性は男の見た目なんかより中身を見てる。」

僕がどんな反応をしようがほとんどの人は気にしないということは、頭では理解しているつもりだったが、心の奥底ではそう思えていないからこそ気にして悩んでいるのだろう。

僕は自分の世界で生きているのかもしれない。

誰もが僕の一挙手一投足に注目していて、常に粗探しをして貶めようとしているという誇大妄想。

実際は誰もが僕なんてどうでもよく、何ならこの世界に必要のない人間だ。 

だからこそ自由に振舞えるのだ。

 薬物治療をすることになった

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前のメンクリには認知行動療法をやると言われていたが、ここではやらないらしい。

薬を飲んで様子を見ていくとのことだ。

紹介状を見て

「この人は漢方しか出してないみたいだけど、うちでは薬を出して治療していきます。それで大丈夫ですか。」

と聞かれ、

「はい、お願いします。」

答えた。

前のメンクリの先生は、薬は不妊などの副作用があり、未来ある若者には出さないと言っていたが、まともに社会生活を送れない僕には当てはまらないと思う。

下手したらその前に自死を遂げてしまう可能性があり、そうなれば本末転倒だ。

精神疾患の治療法として、最も基本的なものが行われることになった。

このことについて親はあまり乗り気じゃないみたいだ。

テレビなどで薬づけにされて狂ってしまった人を見てきたからだ。

確かにそういう人もいるだろうし心配する気持ちもわかるが、そんな危険な代物ならばとっくに国が規制しているだろう。

医者や薬剤師の言うとおりに適切に摂取する分には問題ない。

常時服用するものと緊張する場面でだけ飲むもの、2種類の薬が提示され、後者を選んだ。

なんとなく毎日飲むのは違う気がしたからだ。

飲んだらすぐ効果が出るらしく、即効性のある薬だ。

 

診察とは別にカウンセリングも勧められたが、一回80分で8,000円すると聞いて行かないことにした。

大学のカウンセリングは無料で行っているので、そっちを近いうちに利用しようと思う。

医者はカウンセリング費用が

「弁護士の相談費用くらいですね。」

と薄ら笑いしながら言った。

冗談のつもりで言ったのだろうが、その一言で患者を金づるとしか見ていないと察した。

何も面白くなかったため、

「はい。」

とだけ無機質に言った。

マスク越しであれば愛想笑いできるが、意図的にしなかった。

これ以上彼を付けあがらせてはいけない。

思った反応が得られず空振りに終わったようで、バツが悪そうに話を続けた。

 

帰りに薬局に寄り、処方箋を渡した。

お姉さんが受付をしてくれたが、僕を見つめるその目が妙に母性を感じさせた。

視線、喋り方や仕草、それらが彼女の周りを漂う優しさを表していた。

僕が抗不安薬抗うつ薬を処方されていたから可哀想と思ったのかもしれない。

眉を少し下げ、まるで生まれたての我が子を見るようなその表情は、僕を楽園へと連れて行ってくれそうだった。

少しふくよかなその体に飛びついて体温を感じたかった。

ぬくもりを全身に纏って愛撫されたい。

そうした欲求を必死に抑え、その場を後にした。