休学できなかった
休学できるかどうか聞くために、大学の学生課に電話した。
去年の履修登録時、前期でオンライン授業は終わり、後期から対面が始まると思っていたため、全ての授業を前期に詰め込んだ。
そして半分ちょっと落とした。
後期は1単位も履修していないため、何もすることがない。
だから授業料を払う意味がなく、休学しようと思っていた。
休学願の提出期限は11月末だった。
もう1か月以上締め切りを過ぎているが、特例で認めてくれるんじゃないかという甘えがあった。
大学側も学生に退学されたら授業料が得られず損するわけだし。
だが、その期待は見事に打ち砕かれた。
期限を過ぎた今からでも休学が許可されるのは、コロナで収入が減って学費を払えない場合だけらしい。
あいにく僕の場合、コロナで父親の収入が激減したということはなく(残業が減ったため、その分わずかに収入が減ったみたいだが)、メンタルヘルスの問題だ。
後期は一単位も取っていないのに、50万円払うことになってしまった。
去年の後期は一応2単位だけ取れていたため、全くの無駄ではなかったと思い込めるが、さすがに1単位も取れないとその50万円は何の意味も持たない。
50万円稼ぐことは、半日でバイトをバックレてしまう僕にとっては相当な苦労を要し、途方もなく遠い道のりに思える。
そのお金があれば色んなものを買えるだろうし、経験もできるだろう。
自分のくだらない羞恥心と甘えのせいでそれを手放すことになってしまった。
学費を払わなければ退学か除籍になるため、卒業する未来のことを考えれば大いに意味はある。
だが、様々な可能性が消えうせ、そしてその負債を抱えながら身を粉にして働くことになる。
こんなことを書きながらも、今はそこまでの危機感はないけれど、無事卒業して働きだしたら奨学金という借金の重さに押しつぶされるんだろう。
父親にこのことを伝えると、
「過ぎたことは気にするな。笑って前向きに考えればいいさ。」
と、全く怒るそぶりを見せることなく陽気な態度で接してくれたため、幾分か気が楽になった。
端から休学できるとは思っていなかったみたいだ。
奨学金が復活する可能性
来年の授業料のことを考え、奨学金が再開される基準と、申請方法を聞くため電話した。
最初は初々しい男性の職員だったが、正確な情報を知らなかったためか、途中でお姉さんに変わった。
具体的な単位数を聞いたところ、今年度10単位取れていれば復活すると言った。
休学できないと知り、少し落ち込んでいた心が大きく跳ね上がるのを感じた。
フル単に近い単位数じゃないと復活しないものだと思っており、ダメもとで確認したのに棚から牡丹餅だった。
これで少なくとも、来年度の後期からは奨学金で払えることになった。
親との話し合い
「去年よりも明るくなったな。笑顔が増えた。前は能面のようだった。秘密を抱えてバレないよう必死だったんだよな。隠そうとしたってそのうちバレて、結局一緒に協力して頑張るしかないんだし。学生ができることなんて限られてるんだから、もっと大人を頼れ。」
そう父は言った。
続けて
「お互いに頑張って行こう。困ったことがあれば何でも相談してくれ。悩みを共有しよう。」
という言葉を僕に向けた。
僕自身も以前より自然体で生活できているなと感じていた。
何かを隠しながら、そしていつバレてもおかしくない状況であれば誰だって気が狂うし塞ぎ込んでしまう。
もうそんな生き地獄には戻りたくない。
隠し事はなしで、正直に生きていく。
一通り父に話し、その後二人で母のもとに行き状況を説明した。
今年度の後期の学費と来年度の前期の学費を工面して払ってもらうことになった。
学費滞納がようやく解消されそうで一安心だ。
これからの目標を話し合った。
まず来年度はフル単する。
そのために今からある程度予習しておく。
去年買ったテキストがあるからそれを使う。
次にバイトする。
いきなり社会人になるよりも、バイトで社会経験をして慣れた方がいいと父が言っていた。
あと、フル単することを前提として、勉学以外で何か取り組んだ方がいいと言われた。
就活のためだけじゃなくて、今後の人生にもいい影響をもたらすから。
留年したからこそ何か新しいことにチャレンジしてみようって。
失敗してよかったと言えるように未来を変えていくということだろう。
これは、普通の人ができることもままならない今の僕が考えるべきことではない。
いっぺんに色々やろうとしたら頭がパンクする。
僕はそんな器用な人間じゃない。
不器用で何もかも平均に達しないダメな人間だ。
目標と今の自分の能力との乖離が激しすぎて、感情が破裂してぐちゃぐちゃになってしまうだろう。
地道に一歩一歩、目標をクリアしていく他ない。
地図は完成した。
あとはそれに従って航海するだけだ。
くじけそうになった時は、船の乗組員に頼ったりして、支えてもらいながら。
そしていつか、人並みの人生を送れる日を夢見て、例え嵐で荒れ狂う海だとしても、突き進むんだ。