日記

バイトを始めて2日目でバックレてしまった。人はそう簡単に変われない。

満を持して働くことになったバイト先を、二日目でバックレてしまった。

怖かった。

動けなかった。

固く閉じられた扉を開けられなかった――。 

大学を卒業するまで続けるつもりだったのに……

何十回もバックレてきたバイト面接にようやく行くことができ、無事採用され、万事うまくいくと思っていた。

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面接、入社手続き、勤務初日。

ミスすることなく、順調に行っていた。

しかし勤務2日目、とうとうまたやってしまった。

バックレを……。

準備はばっちりだった

初日は完璧だった。

勢いよく扉を開け、店内に入って、目に入った店員に大きな声で

「今日からお世話になりますみぃです、よろしくお願いします!」

とお辞儀して、控室に向かった。

教わったことを聞き逃さず、わからないことは質問し、何のミスもせず勤務初日を終えた。

 

2日目からは夕勤で、僕と同世代の大学生と働くことになっていた。

家を出る前にストレッチと筋トレを済ます。

店に向かう最中、心拍数が上がり

「行きたくない……」

という思いが募った。

「別に失敗しても命が取られるわけじゃないんだから大丈夫。お前ならできる。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫」

そう言い聞かせた。

勤務地の前の石に腰かけ、満面の笑みを作り、通り過ぎる人に微笑みかけた。

僕の気色悪い表情を見て、顔を引きつらす人々が何とも滑稽であった。

深呼吸。

鼻から吸って口から吐く。

そして

「よしっ!」

と大声で叫び、自分を鼓舞した。

多くの通行人が「何事?!」という顔で僕を見た。

意を決して僕は立ち上がった。

僕はまた逃げた

店に向かおうとしたものの、なぜか真っ直ぐ進めず、その場をぐるぐる周っていた。

飛び跳ねたり、胸や腕やほっぺたを叩き

「これから戦じゃ!」

と言わんばかりに士気を奮い立たせた。

「バイトに行くくらいでこんなに気合い入れてる人なんて僕くらいだよな……」

と卑下するような、自分の頑張りを冷笑するような声が頭の中で響いた。

――結局、時間になってもその場から離れることはできなかった。 

怖くて仕方がなかったのだ。

怒られたり、恥をかいたり、一緒に働くことになる大学生に馬鹿にされるのが。

電話がかかってきたが、携帯をそっとポケットにしまった。

勤務開始時間が過ぎて店を後にするとき、不思議と爽快な気分になった。

僕の心に絶望の黒は見えず、雲一つない晴れた青が広がっていた。

自分は猛烈な逃げ癖――バックレ欲求ともいうべき難病に憑りつかれた患者なのだと思い知った。

「あはははは! あはははは! あはははは……」

もう笑うしかなかった。

通行人にどう思われようが何とも思わない。

二度と会わないから。

でもこれからも顔を合わせる人に対してそんな気持ちにはなれない。

一回でも何かやらかしてしまえば後の人間関係に影響する。

これから先ずっと気まずい思いを強いられることになる。

だからたった一度の失敗も許されないのだ。 

『逃げ癖』の恐ろしさ

当たり前だけど、店の扉に鍵はかかっていない。

ではなぜ開けないのか?

それは扉一面に僕にしか見えないメデューサの目がついているから。

いくら入念な準備をしようがそれを見た途端、タイムリミットが来るまでその場で固まって身動きが取れなくなってしまうのだ。

ならば目をつぶって突き進めばいい。

立ち止まって一呼吸置くなんてこともせず、家を出たその足で何も考えずに。

そうすれば、いとも容易く中に入ることができるだろう。

 

職場のせいにするわけでは決してないが、最高の職場だったかというとそこまでではなかった。

教えてくれたパートの女性二人はとてもやさしかったし店長も口数は少ないが気の合いそうな人だった。

でも、シフトが一週間単位で先の予定が立てられないことや、購入した作業靴のサイズが合わなくて気になったり、多少接客的なことがあったりと、気になる点はあった。

また、初日に愛想よく対応し、目立った失敗もなかった故に、期待されてそれを裏切ってしまったらどうしようって勝手にプレッシャーを感じて不安になってしまった。

「一度習ったことが出来なかったら怒られだろうな……嫌だな……」

と考えたり、

「僕がサークルに入ってなかったりバイトデビューしたばかりだとか、陰キャな事がバレて馬鹿にされたらどうしよう……」

ってどんどん怯えが強まっていった。

自意識過剰っぷりが極まっていった。

 

染みついた『逃げ癖』はそう簡単には治らない。

何度も何度も行動を起こして挑戦して、脳内選択肢から「逃げる」というコマンドを消し去らねばならない。

「逃げ癖も、対人恐怖症も、この卑屈な性格も、生まれ変わらないと治らないんだ……。死ぬしかない!」

と逃げ癖をこじらせた結果、死ぬしかないという結論に至ってしまう。

逃げて逃げて逃げた先には『死』への逃げが待っている。

最期まで逃げの姿勢を崩せないのだ。

その頑なさを別の方向に発揮できれば成功しそうな気もするが、それが出来たら苦労しない……。

僕の歩みは止まらない

バックレ前日、早朝バイトの面接に行った。

お金を稼ぎたかったのと、時間を有効活用するために、掛け持ちでバイトをしようと思ったからだ。

多少緊張したものの、特筆すべき点もなく終えた。

今までどうしても越えられなかった壁である「ちゃんと面接に行くこと」が難なくできるようになったのだ!

僕は確実に進歩している。

ちょっと前までは、家に引きこもって、バイト面接をバックレて、自己嫌悪に苛まれる日々を送っていた。

「親が僕を産まなければこんなことにはならなかった! あいつにいじめられなければバラ色の高校生活が送れたのに! 僕のことを虐げるこの社会に復讐してやる!」

そうやって全てを親や他人や社会のせいにしていた。

あくまでも自分は被害者であり悲劇のヒロインなのだと信じてやまなかった。

容姿だけでなく中身まで醜い化け物だった。

でも今は、行動して、挫折して、また立ち上がろうとしてる。

僕は何度だってやり直す。

偉大なる両親に育てられ、大きな『愛』を受け、愛おしい人生を歩んできた。

世界の素晴らしさに気付いたあの日から、僕の人生は生まれたての赤子が見る景色のように眩しく輝いてる。

その光は寸分の迷いもなく僕の行く先を照らすだろう。

人はいきなり変わることはできない。

けれども、少しづつ地道に積み上げていくことで、いつしか凛々しく聳え立つあの塔のように高みに手が届く。

そこから見える景色はさぞ美しいに違いない。

立ち止まらなければきっとそこにたどりつける日が来る。

後退も停滞も許されない。

歩みを止めず前進あるのみ。

追記:就労祝いを頂きました!

バイトに採用されたことをツイッターやブログで報告したところ、その数日後に就労祝いとしてこんなプレゼントが届きました!

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「ホットアイマスクってよく聞くし使ってみたいな~」とは思いつつも、お金がないのでウィンドウ越しに眺めていました。

そんなとき、救世主が現れ、プレゼントを贈ってくださったのです。

しかも欲しいものリストには一箱しか入れていなかったのに二箱も贈ってくださったんです。

あまりの驚きに目ではなく口にアイマスクをつけそうになるくらい嬉しかったです!

にもかかわらず瞬く間にバイトをやめてしまいました(しかもバックレ……)。

申し訳ないです……。

落ち込んでいる暇なんて一秒たりともありませんので、慌てふためきながら次のバイトへ突撃したいと思います。

本当にありがとうございます!

www.amazon.jp